ジャーナル/Plant Science & Curiosities · 読了目安6分
コーヒーかすは肥料になる?植物への効果と正しい使い方
文: Dr. Lena Okafor · 植物の科学と不思議
コーヒーかすは植物の肥料になるのか検証。土を酸性にする・虫除けになるといった俗説の真偽と、堆肥化という正しい使い方を解説します。
かんたんに言うと
抽出後のコーヒーかすはpH6.5〜6.8とほぼ中性で、ブルーベリーの土を酸性にしたり、あじさいを青くしたりする効果はありません。そのまま鉢や庭にまくと、カフェインと一時的な窒素飢餓の影響で、むしろ生育を抑えてしまうこともあります。研究に裏づけられた正しい使い方は、まず堆肥にすることです。堆肥全体の体積のおよそ5分の1までを目安にしましょう。
生ゴミ入れと花壇のあいだで、コーヒーかすはいつしか「無料の万能肥料」という評判を得てきました。土を酸性にする、バラを元気にする、ナメクジを寄せつけない……。しかし研究結果を見ると、実態はもう少し地味で、俗説とはむしろ逆の効果が出るケースも少なくありません。飲み終わったコーヒーかすが実際に庭で何をしてくれるのか、そして本当に効果のある唯一の使い方を紹介します。
俗説その1:コーヒーかすは土を酸性にする
酸味の成分は抽出の過程でほとんど抜けてしまいます。生の(抽出前の)豆は確かに酸性ですが、お湯を通したあとにフィルターに残るかすは、pH6.5〜6.8前後とほぼ中性です。ブルーベリーやツツジ、サザンカのまわりに使用済みのコーヒーかすをまいても、土のpHを目に見えて下げることはできませんし、あじさいの花色を青く変えることもできません。花色の変化は、しっかり酸性の土壌でアルミニウムが吸収されやすくなることが条件で、コーヒーかすはその条件を満たさないからです。酸性の土が必要な場合は、酸度調整済みの用土や硫黄系の資材を使い、まずは土壌診断をしましょう。
俗説その2:そのまま肥料になる
コーヒーかすには確かに窒素が約2%含まれ、リン・カリウムや微量ミネラルもわずかに含まれています。数字だけ見ればそれなりに立派です。問題は、そのほとんどがすぐに根から吸収できる形になっていないことです。窒素は有機化合物の中に閉じ込められており、土壌中の微生物が分解して初めて利用可能になります。そしてその分解の間、微生物は周囲の土から使える窒素を借りて活動します。生のコーヒーかすを株元にどっさりまくと、まさに養分を与えたかった根のまわりで、一時的に窒素が不足する状態を作ってしまうのです。植物にとっては、利子の高い借金をさせられるようなものです。
カフェインという厄介な問題
さらに奇妙な問題があります。カフェインそのものです。コーヒーの木はもともとカフェインを、周囲で競合する植物の発芽や生育を抑える一種の化学兵器(他感作用・アレロパシー)として進化させてきました。抽出後のかすにも残留カフェインが含まれており、実験でもその影響が確認されています。メルボルン大学の研究チームがブロッコリー、リーキ、ラディッシュ、ビオラ、ヒマワリの花壇に使用済みコーヒーかすを施したところ、施肥の有無や土壌の種類にかかわらず、すべての品種で生育が悪化しました。とくに苗や若い株が影響を受けやすく、「トマトの苗にコーヒーかすを」という話がよくがっかりする結果に終わるのはこのためです。
注意:花壇や鉢に厚くコーヒーかすを重ねてまくのは避けましょう。梅雨など湿気の多い時期はとくにカビが生えやすく、細かいコーヒーの粒子が固まって水を弾く硬い層をつくり、その下の根鉢に雨水や水やりの水が届かなくなってしまいます。土にラップをかけてしまうようなものです。
俗説その3:ナメクジや猫を寄せつけない
コーヒーかすの輪を作れば、ナメクジが越えられない結界になる――という話は魅力的ですが、期待は禁物です。実験では、ナメクジがコーヒーかすの帯をほとんどためらわずに乗り越える様子が確認されており、とくに結界が最も必要な雨の日ほど効果が薄れます。猫よけとしての効果も同様に根拠は乏しいものです。試してみるのは自由ですが、大切な鉢植えの防御をこれだけに頼るのはやめておきましょう。
本当に効果があるのは:堆肥にすること
ここでコーヒーかすは名誉を取り戻します。堆肥の材料としては非常に優秀です。湿り気があり、細かく崩れやすい窒素豊富な「生ゴミ系(緑の資材)」として、堆肥の温度を上げ、分解者である微生物を育て、雑草の種や病原菌を死滅させる高温を維持する助けになります。堆肥化の過程でカフェインも分解され、閉じ込められていた窒素も植物が使える形に変わるため、二つの問題を同時に解決できるのです。
- コーヒーかすは堆肥全体の体積のおよそ20%までを目安にしましょう。
- 炭素豊富な「茶色の資材」とバランスをとります。コーヒーかす1、生の刈り草1、乾いた落ち葉1の割合が目安です。
- 紙製のコーヒーフィルターも一緒に入れて構いません。茶色の資材として扱えます。
- 週に1回堆肥を切り返せば、3〜6か月ほどで使える堆肥になります。
- ミミズコンポストにも少量なら問題ありません。ミミズは少しずつなら耐えますが、入れすぎるとコンポスト全体が酸っぱくなってしまいます。
ヒント:堆肥化が難しい場合、リスクの少ない直接利用は「層ではなくうっすらとひと振り」程度にとどめ、まだ若い株ではなく生育の落ち着いた株のまわりの土に、茎から離してすき込みましょう。頻度は数週間に1回までが目安です。
結局、コーヒーかすは誰が使うべき?
堆肥箱がある人にはぜひおすすめです。堆肥箱がない人は、成熟した株限定で、ごく薄く控えめに使いましょう。そして誰であっても、酸度調整剤や単独の肥料、ナメクジよけとして使うのは避けるべきです。研究結果がそれを支持していないからです。観葉植物にはとくに注意が必要で、小さな鉢の中ではかすの固化や窒素飢餓の影響が強く出やすいため、室内の鉢にはコーヒーかすを使わず、きちんとしたバランス肥料を使いましょう。
植物の様子がおかしく、肥料や土の問題かもしれないと感じたら、PlantMeで写真を撮ってみてください。Plant Doctorが養分不足なのか、500種類以上の病害虫データベースにある別の原因なのかを見分け、当てずっぽうではなく本当の原因に対処できるようにしてくれます。
よくある質問
コーヒーかすを喜ぶ植物はありますか。
直接まいて喜ぶ植物は、実質的にはほとんどありません。研究では、生のコーヒーかすはほとんどの植物で生育を抑えることが示されています。「コーヒーかすが好き」と言われる植物も、実際に恩恵を受けているのは完成した堆肥であり、コーヒーかすそのものではありません。まず堆肥にすれば、あらゆる植物にとってプラスになります。
バラにコーヒーかすは効果がありますか。
考え方は同じです。堆肥化したコーヒーかすをすき込んだバラの花壇は、よい土壌改良材になりますが、生のかすを株元に積むと窒素飢餓や表面の固化を招くおそれがあります。バラは肥料をよく吸う植物なので、実際の栄養補給には専用のバラ用肥料を使いましょう。
観葉植物にコーヒーかすを使ってもよいですか。
おすすめしません。限られた鉢の土の中では、かすの層がすぐに固まって水を弾くようになり、コバエを誘引し、窒素を土に閉じ込めてしまいます。バランスのとれた液体肥料を代わりに使いましょう。
コーヒーかすはアリよけになりますか。
アリは新鮮なコーヒーかすの上を歩くのを嫌う傾向がありますが、ナメクジの場合と同様、効果は弱く長続きしません。とくに屋外で雨に濡れたあとは効果が薄れます。アリ対策の本命というより、軽い足止め程度に考えておきましょう。