ジャーナル/Vegetable Garden · 読了目安7分
ほうれん草の育て方:種まきから収穫まで
文: Arthur Meade · 家庭菜園と季節の作業
ほうれん草の育て方を種まき時期から解説。秋まきと春まきの目安、苦土石灰での土づくり、間引き、トウ立ち対策、寒締めと収穫のコツ。
かんたんに言うと
ほうれん草は涼しい季節の野菜で、種まきから収穫まで6〜8週間ほどです。9〜10月の秋まきが本命で、春まきは3〜4月。深さ1〜2cmにすじまきし、本葉が出たら株間8〜10cmに間引きます。酸性土壌に弱いので苦土石灰でpH6.5前後に整えるのが基本。25℃前後の高温と長日でトウ立ちするため、暑い時期の種まきは避けましょう。
ほうれん草は「難しい野菜」と言われがちですが、それは半分だけ当たっています。まく時期を間違えると、あっという間にトウが立ち、苦い葉と花茎だけが残ります。ただし難しいというより、正確なのです。ほうれん草は気温と日長で動く体内時計を持った涼しい季節の作物で、その時計に逆らわずに育てれば、家庭菜園でいちばん早く、いちばんよく穫れる野菜のひとつになります。種まきから6週間で食卓へ。しかも、切ったあと何度も再生します。
種まきの時期がすべてを決める
ほうれん草の発芽適温は15〜20℃前後で、地温7℃ほどから発芽し、21℃を超えると発芽率が急に落ちて、まいても出てこないことがあります。高温と長日でトウ立ちする性質と合わせると、まく時期はおのずと決まります。本命は9〜10月の秋まき。冷え込みとともに葉が厚く甘くなり、失敗もほとんどありません。春まきは3〜4月ですが、日が長くなるにつれてトウ立ちのリスクが上がるため、早めに収穫するのが前提です。真夏のまき直しは、種を捨てるようなものと考えてください。
- 秋まき(本命):9〜10月に2週間おきにまくと、11月から翌春まで長く収穫できます。
- 春まき:3〜4月。日が長くなる前に穫り切る前提で、トウ立ちしにくい品種(東洋種より西洋種・交配種)を選びます。
- 冬どり・寒締め:10月中旬までにまいた株を、寒さに当てながらゆっくり育てると、糖度が上がって驚くほど甘くなります。不織布のべたがけやトンネルで霜よけをしましょう。
- 越冬:本葉が数枚の状態で厳寒期を迎えるようにまき、敷きわらやもみがらで防寒すると、春一番に一気に伸び出します。
土づくりと場所
ほうれん草は酸性土壌に非常に弱く、日本の畑では土づくりが成否を分けます。種まきの2週間前までに苦土石灰を1平方メートルあたり100〜150g施し、pH6.5前後に調整してください。葉を早く大きくする野菜なので肥料食いでもあります。完熟堆肥と元肥をしっかり入れた、水はけのよい肥沃な土が理想です。涼しい季節は日当たりのよい場所で、春まきでは午後に少し日陰になる場所を選ぶと、トウ立ちを1〜2週間遅らせられます。プランター栽培も向いていて、深さ20cmあれば十分に穫れます。
種まきと間引き
ほうれん草は直根性で移植を嫌うため、畑やプランターに直まきします。深さ1〜2cm、2〜3cm間隔のすじまきにし、条間は25〜30cmとって、軽く鎮圧します。発芽は気温により5〜14日。本葉が2枚になったら、ベビーリーフなら株間8〜10cm、大株どりなら15cmに間引きます。間引き菜はやわらかく、そのままサラダに使えます。
ヒント:ほうれん草の種は寿命が短く、古い種は発芽が揃いません。毎年新しい種を使うか、古い種は多めにまいてください。地温が高い時期にまくときは、種を一晩水に浸してから1週間ほど冷蔵庫に入れておくと、発芽が安定します。
水やりと追肥
水分ムラは、やわらかく甘いほうれん草と、かたく苦いトウ立ちしやすいほうれん草を分けます。乾燥はトウ立ちの引き金になるので、土の表面が乾いたらたっぷり与え、条間に敷きわらをして根まわりの温度と水分を保ちましょう。元肥が効いていれば追肥はほとんど不要ですが、葉色が薄く生育が遅いときは、草丈が3分の1ほどになった時点で液肥を与えると持ち直します。
トウ立ちの原因と遅らせ方
トウ立ちは、25℃前後を超える高温、14時間を超える日長、そして乾燥や過密によるストレスへの反応です。花茎が立ってしまった株は元に戻りませんが、引き金を遅らせることはできます。適期にまく、危ない時期には晩抽性(トウ立ちしにくい)品種を選ぶ、水を切らさない、間引きを遅らせない、暑い日は午後に日陰をつくる。トウが立ったら株ごと抜き取り、まだやわらかい葉をその日のうちに食べてしまいましょう。
害虫と病気
- ハモグリバエ(エカキムシ):葉の中に白い曲がりくねった食害痕。見つけた葉は摘み取って処分し、種まき直後から防虫ネットをかけると産卵自体を防げます。
- アブラムシ:新芽や葉裏に群生し、生育を止めます。ネットで予防し、発生したら早めに洗い流すか薬剤で対処します。
- べと病:葉の表に黄色い斑、裏に灰紫色のカビ。低温多湿と過密で出やすいので、間引きで風通しを確保し、葉ではなく株元に水をやり、抵抗性品種を選びます。
- 鳥とナメクジ:発芽直後の芽が一晩で消えることがあります。秋まきは特にネットや対策資材で守りましょう。
収穫:かき取りと株ごと
草丈20cm前後、種まきから5〜7週間で収穫適期です。外葉から数枚ずつかき取れば、中心から次々と新しい葉が出て数週間穫り続けられます。ベビーリーフなら、株元から3cmほどの高さでハサミで刈り取ると、2〜3回再生します。収穫は気温の低い朝がおすすめで、葉のはりが違います。ほうれん草はしおれやすいので、収穫後は早めに調理するか冷蔵庫へ。しおれても冷水に浸すと驚くほど回復します。
注意:ほうれん草(Spinacia oleracea)と、暑さに強い「つるむらさき」や「ニュージーランドほうれんそう(つるな)」は別の植物です。どちらも夏場の葉物として優秀ですが、性質も育て方も異なります。特につるなはシュウ酸が多いため、量を食べるときは必ず下ゆでしてください。
何を育てているのか分からない、葉に見慣れない斑点が出た。そんなときはPlantMeを向けてみてください。野菜そのものも病害虫も判別できるので、べと病なのか泥はねなのかを確かめてから手を打てます。
よくある質問
ほうれん草は種まきからどのくらいで収穫できますか。
涼しい時期で、種まきから6〜8週間が目安です。ベビーリーフとして若い葉を摘むだけなら、9月にまいて3〜4週間で収穫できます。
夏にほうれん草は育てられますか。
高温と長日でトウ立ちし、地温21℃以上では発芽も揃わないため、真夏の栽培は向きません。夏の葉物にはつるむらさきやつるな、スイスチャードを使い、9月から本命の秋まきを始めましょう。
ほうれん草がすぐトウ立ちしてしまいます。
高温、長日、乾燥、過密が原因で、多くは複合的です。適期にまき、土を乾かさず、間引きを早めに行い、春まきには晩抽性の品種を選んでください。
収穫したあと、また生えてきますか。
はい。外葉をかき取れば中心から伸び続け、ベビーリーフとして株元3cmで刈れば2〜3回再生します。
プランターでも育てられますか。
十分に育ちます。深さ20cm以上の容器に、酸度調整済みの野菜用培養土を使い、乾かさないように管理してください。ベランダの限られたスペースでは、ベビーリーフ栽培がいちばん効率的です。