ジャーナル/Vegetable Garden · 6分で読めます
トマトの種取りのやり方|自家採種から保存まで
トマトの種取りを発酵処理の手順つきで解説。固定種とF1品種の違い、乾燥・保存の方法、翌年のまきどきまでまとめました。
かんたんに言うと
完熟した固定種のトマトから種とゼリー状の果肉をすくって瓶に入れ、少量の水を加えて室温で1〜3日発酵させます。ざるですすいでから、陶器の皿かコーヒーフィルターの上で1〜2週間乾燥させれば完了です。乾燥剤を入れた密閉容器で冷暗所に保存すれば4〜6年は発芽力を保ちます。種取りできるのは固定種・在来種だけで、F1品種(一代交配)の種は親と同じにはなりません。
収穫が最盛期を迎える8月は、来年のことを考えるのにちょうどよい時期です。トマトの自家採種にかかる実質の作業時間は10分ほど、費用もかからず、何シーズンか続けるうちに、あなたの庭で育ちやすい株を少しずつ選抜していくことになります。ここでは種苗業界や昔からの家庭菜園家が頼りにしてきた方法と、手軽な代用法を紹介します。
まず確認:固定種か、F1品種か
種取りする価値があるかどうかは、ここで決まります。F1品種(一代交配)――種袋や苗のラベルに「F1」と書かれているもの――は、2つの親系統を掛け合わせてつくられます。種自体は発芽しますが、次の世代では親の遺伝子が組み変わるため、トマトは実っても品種の特徴がバラバラになります。固定種・在来種は親と同じ性質を受け継ぐので、今年のいちばん良い実から採った種で、来年も同じ品種が育ちます。‘桃太郎’はF1品種の代表格で、固定種には‘アロイトマト’‘ステラミニトマト’‘サンマルツァーノ’などがあります。ラベルが手元になければ品種名で調べてみてください。
種を採る実を選ぶ
種は実だけでなく株から選びます。これまで病気の兆候がなく、よく実をつけている健康な株を選び、その品種らしい特徴を備えた完熟――やや熟れすぎくらいの実を採ります。弱っている株や、癒着して変形した実は避けましょう。変形果は形質の乱れを受け継ぎやすい傾向があります。同じ品種の株を2〜3株から採ると、系統に多少の遺伝的な幅が保てます。
発酵処理(もっとも確実な方法)
トマトの種はそれぞれゼリー状の膜に包まれており、この膜には発芽抑制物質が含まれています。実の中で種が発芽してしまわないための仕組みです。発酵処理はこの膜を分解すると同時に、種を介して伝わるいくつかの病気も抑えてくれます。処理中は一時的にかなり匂いますが、効果は確かです。
- トマトを赤道線で半分に切り、種とゼリー状の果肉を清潔な瓶にしぼり出すかスプーンですくい入れます。残りの果肉は普通に食べて構いません。
- 少量の水を加え、布か軽くのせただけのふた(空気が通るもの)をかぶせ、品種名を書いたラベルを貼って、直射日光を避けた室温の場所に置きます。
- 毎日かき混ぜます。1〜3日で表面に薄い膜や小さな泡が浮かびます。ここで完了です。3日を超えて発酵させると発芽率が下がり始めます。
- 浮いた膜やかす、浮いている種を捨てます。浮く種は中身の充実していない不良種です。良い種は沈みます。
- 沈んだ種を目の細かいざるに入れ、流水でぬめりがなくなるまですすぎます。
- 陶器の皿やガラス皿、コーヒーフィルターの上に重ならないよう広げます(キッチンペーパーは種がくっつくので不向きです)。風通しのよい日陰で1〜2週間乾かします。
手軽な方法
急いでいるときは発酵処理を省略できます。コーヒーフィルターの上に種をしぼり出して広げ、しっかり乾かし、フィルターごと保存します。翌春、その一部を紙ごとちぎってそのまき溝にまけば、種と紙がそのまま土になじみます。実際に発芽しますが、発芽率はやや落ち、保存期間も4〜6年ではなく1〜2年程度と短くなります。発芽抑制物質を含む膜が完全には取り除かれていないためです。
乾燥と保存
種が曲がらずパキッと折れ、互いにくっつかなくなれば乾燥は十分です。品種名と採種した年を必ず書いた紙の封筒に入れ、それを密閉できる瓶に入れて、涼しく暗く乾いた場所で保管します。瓶の中にシリカゲルの乾燥剤や乾燥した米を大さじ1杯ほど入れておくと、湿度の変化を吸収してくれます。この方法なら、トマトの種は4〜6年、条件がよければそれ以上、確実に発芽力を保ちます。天敵は高温、湿気、そしてラベルを貼り忘れて中身がわからなくなることです。
交雑の心配はある?
ほとんどの場合、心配は要りません。トマトの花は開く前に自家受粉を済ませてしまうため、隣どうしに違う品種を植えていても、品種の特徴はかなりの確率で保たれます。例外は葉がジャガイモに似たタイプの在来種や、一部の大玉品種で、花の構造上、虫が入りやすくなっています。確実を期したいなら、株の中ほどの実から採り、隣の品種とは数メートル離して育てた株を選びましょう。
翌春の発芽テスト
まきどきの前に、少量の種でテストしておきましょう。湿らせたペーパータオルの上に10粒並べ、軽くふたをした容器に入れて暖かい場所に置き、1週間後に発芽数を数えます。8粒以上発芽すれば上出来、5粒程度なら倍量をまき、それより少なければ新しい種を買って、余った土は堆肥として使いましょう。
ワンポイント:種取りは積み重ねです。毎年、いちばん元気な株の、いちばん早く実って、いちばんおいしかった実から種を採り続けると、数シーズンのうちに、あなたの土地の気候と味の好みにしっかり合った系統が育っていきます。
注意:疫病や萎凋病、斑点性の病気が出た株からは、絶対に種を採らないでください。トマトの病気にはいくつか種子伝染するものがあり、発酵処理でもリスクは減らせても完全には防げません。病気の親株ひとつが、来年の被害の火種になり得ます。
いちばん良い株に出た斑点が、心配のいらないものか、種取りを見送るべきサインなのか判断がつかないときは、PlantMeで葉を撮影してみてください。500種類以上の病気を治療法つきで診断できるので、瓶を1本病気の種のために使ってしまう前に、株が健康かどうか確かめられます。
8月:種取りの適期
8月は収穫の最盛期であり、種取りにもいちばん適した時期です。ただし梅雨明け後とはいえ湿度が高い季節でもあるので、乾燥は必ず風通しのよい日陰で1〜2週間かけて行い、生乾きのまま保存瓶に入れないようにしてください。まきどきは翌年の2〜4月に育苗し、最終霜が過ぎてから畑に定植するのが基本です。
よくある質問
スーパーで買ったトマトから種を採ってもよいですか。
採れますし、たいてい発芽もしますが、スーパーのトマトの多くはF1品種で、しかも日本と違う気候で育てられていることが多いため、結果は不安定です。産地直売所などで固定種の品種名がついている実のほうが確実です。
発酵処理は本当に必要ですか。
発芽率と保存期間を優先するなら必要です。発酵処理は種を包むゼリー状の抑制物質を取り除き、種子伝染性の病気も抑えます。ペーパータオルを使う簡易法でも短期的な保存はできますが、発芽率はやや下がり、保存期間も4〜6年ではなく1〜2年になります。
採った種はどれくらい保存できますか。
発酵処理をしてしっかり乾燥させ、涼しく暗く乾いた場所で保存すれば4〜6年、条件がよければそれ以上もちます。種を早くだめにする一番の原因は、高温と湿気です。
採った種はいつまくのがよいですか。
屋内育苗なら最終霜の6〜8週間前が目安で、夜間の気温が安定して10℃を上回るようになってから畑に定植します。霜の心配がない地域では、乾燥・温暖な栽培シーズンの入り口でまき始めてください。