ジャーナル/Vegetable Garden · 6分で読めます
トマトの尻腐れ病|お尻が黒くなる原因と対策
トマトのお尻が黒くへこむのは尻腐れ病。病気ではなく生理障害です。本当の原因と、カルシウム剤より水やりが効く理由をわかりやすく解説します。
かんたんに言うと
尻腐れ病は土のカルシウム不足ではなく、カルシウムが実まで届かない「運搬の問題」です。水やりが不安定になると果実へのカルシウム供給が途切れ、お尻の組織が黒く硬くへこみます。対策は、深く均一な水やりとマルチング。カルシウム剤の葉面散布はほとんど効果がありません。
真夏の家庭菜園でいちばんがっかりする光景かもしれません。最初のトマトがきれいに色づいてきたと思って裏返すと、お尻——ヘタの反対側——が黒く、硬く、腐ったようにへこんでいる。これが尻腐れ病です。まず知っておいてほしいのは、これは病気ではないということ。何かに感染しているわけではなく、実から実へうつることもなく、直すのにお金はかかりません。それでも、誤解のせいで無駄な資材にお金を使ってしまう人がいちばん多いトラブルでもあります。順番に整理していきましょう。
尻腐れ病の見た目
最初は果実のお尻側に、水がしみたような小さな斑点が出ます。まだ緑色で、半分ほどの大きさのころが多いです。斑点はやがて黒ずみ、へこみ、硬い革のような質感に変わり、ときに果実の3分の1を覆います。傷んだ組織に二次的なカビが入り込むと黒く毛羽立って見え、いかにも病気らしい姿になります。トマトが代表的ですが、ピーマンやパプリカ、ナス、ズッキーニにも同じ現象が起きます。加熱用の細長い品種はとくに出やすく、逆にミニトマトは強い傾向があります。
本当の原因はカルシウムの「配達不良」
傷んだ部分が実際にカルシウム不足になっているのは事実です。カルシウムは細胞壁をつくるためのモルタルのような役割を持ち、足りなければ果実は文字どおり先端から崩れます。ただし多くの菜園では、土の中のカルシウムは十分にあります。足りないのは在庫ではなく配達のほうです。カルシウムは水に溶けた状態でしか動けず、蒸散の流れに乗って運ばれ、しかも果実よりはるかに蒸散量の多い葉へ優先的に向かいます。乾かしすぎた週末、雨続きの一週間、傷んだ根——水の流れが途切れると、真っ先にカルシウムが届かなくなるのが果実です。そして供給ラインのいちばん先端であるお尻から崩れていきます。
引き金になる条件
- 水やりのムラ——典型的な原因です。カラカラに乾かしてからどっと与えると、まさに途切れがちな流れが生まれます。
- ベランダ菜園のプランター栽培:高温期は用土が一気に乾き、濡れと乾きの差が激しくなるため、尻腐れ病がいちばん出やすい環境です。
- 窒素の与えすぎ:葉ばかりが茂り、その葉が果実よりも先にカルシウムを取り込んでしまいます。
- 中耕や植え付け時の根の傷み——働く根が減れば、吸える水も減ります。
- 第1果房に一気に実がついたとき。需要が急増するため、そのシーズン最初の房ほど症状が出やすくなります。
カルシウム剤や卵の殻は効きますか?
よく聞く尻腐れ対策を正直に評価すると
| 対策 | 評価 |
|---|---|
| 深く、間隔を一定にした水やり | これが本命。ほかの対策はこれなしでは機能しません。 |
| 株元のマルチング | 非常に有効。水やりの合間の土の水分を安定させます。 |
| カルシウム剤の葉面散布 | ホームセンターでよく売られていますが、ほぼ効きません。葉のカルシウム吸収は少なく、果実はさらに少なく、葉から果実へは移動しません。 |
| 植え穴に入れる卵の殻 | 分解が遅すぎて今シーズンには間に合いません。そもそも多くの土はカルシウム不足ではありません。 |
| 硫酸マグネシウム(にがり系) | 逆効果。マグネシウムはカルシウムと吸収を競合します。 |
| 症状が出た実を摘む | 有効。株の力を健全な実に回せます。 |
対処の手順
- 症状の出た果実は摘み取ります。回復はしませんし、株はその分のエネルギーを他へ回せます。
- 深く、決まったリズムで水やりを。露地なら1平方メートルあたり週25〜40リットルが目安で、まとめて一度ではなく均一に与えます。
- 株元にわら、堆肥、刈った草などを5センチほど敷いて、土の水分変化をやわらげます。
- プランターは高温期には毎日確認を。猛暑日には朝夕2回の水やりが必要になることもあります。
- 窒素の多い肥料を控え、着果後はトマト用のバランス型肥料に切り替えます。
- 株元を深く耕さないこと。トマトの細根は地表近くに広がっています。
ワンポイント:水やりが安定すれば、同じ株の2段目・3段目の房はきれいに実ることがほとんどです。株が何かに「かかった」わけではないので、最初の房が悪くても、その後のシーズンを悲観する必要はありません。
注意:カルシウム資材を入れる前に、土壌診断をしてみる価値があります。石灰や石膏が効くのは、本当にカルシウムが少ないか強い酸性の土だけで、不要な施用はほかの養分を効きにくくすることがあります。
食べても大丈夫?
大丈夫です。尻腐れ病は感染ではなく生理障害なので、硬くなった部分を大きめに切り落とせば、残りはふつうに食べられます。ただし二次的なカビが入っている場合は別です。斑点の下の果肉が変なにおいがしたり、灰色にやわらかくなっていたりしたら、処分してください。
尻腐れ病なのか、それとも疫病のようなもっと厄介な病気なのか判断に迷うときは、果実をPlantMeで撮影してみてください。診断エンジンは500種類以上の病気や生理障害に対応しており、水やりの問題なのか、急いで手を打つべき病害なのかを数秒で示してくれます。
よくある質問
尻腐れ病はほかのトマトにうつりますか?
うつりません。カビ・細菌・ウイルスのいずれが原因でもないため、伝染しません。複数の実に同時に出た場合は、感染ではなく、それらがすべて同じ水ストレスを受けたということです。
プランターのトマトだけ尻腐れになるのはなぜですか?
プランターは用土の量が少なく、乾くのも湿るのも速いため、カルシウムの供給を途切れさせる水分変動が起きやすいからです。大きめの容器にする、高温期は毎日確認する、用土の表面をマルチングする、この3つでたいてい解決します。
石灰をまく必要はありますか?
土壌診断で本当に酸性が強い、あるいはカルシウムが少ないと分かった場合だけです。家庭菜園の土の多くは当てはまりません。ふつうの菜園なら、石灰やカルシウム剤に使うお金は、マルチング資材と如雨露に回したほうが確実に効きます。
尻腐れ病に強い品種はありますか?
ミニトマトがいちばん強いです。実が小さいぶん、必要なカルシウムも少なくて済みます。反対に、サンマルツァーノのような加熱用の細長い品種はとくに出やすい品種です。毎年悩まされているなら、ミニトマト+しっかりマルチングがいちばん簡単な解決策です。