ジャーナル/Troubleshooting · 6分
芝生にキノコが生える原因と対処法|輪になって生える場合は?
梅雨や秋雨のあと、芝生にキノコが生えるのはなぜでしょうか。土の中で養分になっているものの見分け方から、効果的な対処法、効果の乏しい方法、輪状に生えるフェアリーリングへの対応まで解説します。
梅雨や秋雨で雨が一週間ほど続いたあと、ある朝、芝生に植えた覚えのないものが顔を出します。フェンス際に点々と、昔サクラがあった場所にひとかたまり、あるいは庭の奥に妙に整った弧を描いて並ぶキノコです。ぎょっとしたり、手入れ不足を見られたように感じたりするかもしれません。でも、たいていはどちらも心配しなくて大丈夫です。芝生にキノコが生えても、ほとんどの場合は病気ではなく、芝を脅かすものでもありません。むしろ、土の中で本来の分解の営みが進んでいるしるしです。キノコは、地下の状態を教えてくれます。その意味を読み取れば、対処が必要な場合も、やることはおおむね明快です。
見えているキノコは、菌の体の一部です
地上に見えるキノコが、菌の体のすべてではありません。キノコは胞子をつくって繁殖するための「子実体」です。本体は細い糸状の菌糸がつくる網で、土やサッチ層の中に広がり、目に見えるキノコが出る何か月も、あるいは何年も前から暮らしていた可能性があります。サッチとは、枯れた芝の葉や茎などが地表にたまった層のことです。こうした菌は、古い刈り草、サッチ、土に埋まった根、落ち葉など、分解途中の有機物を養分にしています。ミネソタ大学の園芸普及部門も、芝生に生えるキノコの大多数は病気と関係がないと明言しています。それどころか、有機物を分解して窒素などの養分を芝に戻してくれる、頼もしい存在です。秋の落ち葉を腐葉土に変えるのと同じ分解者が、芝生の下でも働いているわけです。
なぜ今、生えてくるのでしょうか
菌は、水分の条件が整うと子実体をつくります。大雨のあとや、湿った曇り空が続く時期、必要以上に散水している芝生でキノコがまとまって出るのはそのためです。日本では梅雨や秋雨の時期によく見られます。秋にはさらに落ち葉という新しい養分も加わり、夏と同じ設定の自動散水が過湿を招くこともあります。毎年同じ雨の季節にキノコが出るからといって、芝生が年々悪くなっているとは限りません。季節に合わせた自然な動きであることが多いのです。
原因の見分け方:何を養分にしているか
キノコの生える場所を見れば、何を養分にしているか見当がつきます。次の項目を上から確認してください。最初に当てはまるものが、原因であることが多いです。
- 1. 土に埋まった木。毎年同じ一角にまとまって生えるなら、古い切り株や、ずっと前に抜いた木の根が地下で腐っている可能性が高いです。木が分解し尽くされればキノコも出なくなりますが、何年もかかることがあります。掘り出すか、切り株用の機械などで削り取って除去する方法もあります。
- 2. サッチや植物の残り。芝生全体に点々と生えるなら、サッチ、枯れた芝、芝の間に入り込んだ落ち葉などを養分にしていると考えられます。熊手でこまめに取り除けば、菌の養分を減らせます。
- 3. 湿りっぱなしの土。日陰や低くなった隅に集中して生えるなら、土がなかなか乾かないことが原因です。日照不足、土の踏み固め、水はけの悪さ、水のやりすぎなどを確認します。
- 4. 輪状の発生。弧や円を描いてキノコが並び、同じ線に沿って芝の色や生育にも変化があるなら、フェアリーリングです。ほかとは対処が異なるため、後の項目で詳しく説明します。
芝生にキノコが生えたときの対処法
- まずは熊手でキノコを倒して集め、取り除きます。子どもや犬が使う芝生なら、堆肥には入れず、ごみとして処分してください。主に見た目を整える作業ですが、胞子を放出する部分を取り除くことにもなります。
- 枯れた芝や落ち葉を熊手でかき出します。とくに湿った日陰の隅は丁寧に。菌が養分にする有機物を減らします。
- 水やりは必要なときに朝、回数を控えて一度に十分な量を与え、日中に地表が乾くようにします。梅雨や秋雨で雨が足りている間は散水を止め、夏が過ぎたら自動散水も夏の設定のままにせず、気温と乾き具合に合わせて減らします。
- 踏み固められた土には、穴をあけるエアレーションを行います。水が地表にとどまらず、土の中へ抜けやすくなります。芝の種類に合わせて、生育していて作業後に回復できる時期を選び、休眠期や厳しい暑さの中で無理に作業しないでください。
- 日が差すように枝を整理します。芝生にかぶさる低木の枝を間引いたり、樹木の下枝を整理したりすると、何かをまくよりも安定して地面を乾きやすくできます。
- 毎年同じ場所にしつこく出るなら、土に埋まった木を疑います。掘り出すか機械で削り取って除去しない限り、養分となる木は残り続けます。
- 殺菌剤に頼るのは避けます。植物の残りを分解する菌の場合、薬剤は目に見える症状への対応にとどまり、養分そのものはなくなりません。大学の園芸普及部門でも、使うとしても最終手段という位置づけです。なお、イギリスでは、英国王立園芸協会(RHS)によると、フェアリーリング用に家庭園芸で使える殺菌剤はありません。
輪になって生える「フェアリーリング」は別に考えます
キノコが輪になって並び、その曲線に沿って芝が枯れたり、逆に濃い緑色でよく茂ったり、両方が見られたりするものをフェアリーリングといいます。菌の集団が中心から外側へ広がり、内側では衰えていくことで輪ができます。RHSがとくに被害が大きいとするのは、Marasmius oreadesによるものです。このキノコは淡い褐色で、丸く盛り上がった傘と、細くても丈夫な柄を持ちます。菌の集団は年に約30cmずつ外側へ広がり、広い芝生では非常に長く続くことがあります。芝に現れる二つの帯には、それぞれ理由があります。菌糸には水をはじく性質があるため、乾燥期には周囲の芝が緑でも、その上の芝だけが水不足で枯れます。一方、古い菌糸や枯れた芝が分解される場所では、放出された養分によって隣の芝が濃い緑色になります。
対処は、できることを現実的に考えるのが大切です。キノコを摘むだけでは、フェアリーリングの解消にはなりません。胞子は別の場所からも飛んできます。菌の集団を掘り取るには、輪の全域にわたって芝と土を少なくとも深さ30cmまで掘り出す必要があり、RHSも多くの庭では現実的でないとしています。取り組みやすいのは症状を和らげる管理です。枯れた部分にスパイクなどで穴をあけ、十分に水をしみ込ませます。芝生用の浸透剤を使うと、水をはじく菌糸の層を越えて水が届きやすくなります。さらに芝へ適切に施肥すると、周囲との色の差が目立ちにくくなります。多くのフェアリーリングは、完全になくすよりも上手につきあうものです。何十年も残っていても、気づいているのは庭の持ち主だけ、ということもあります。
安全のために、必ず守りたいこと
芝生に生えたキノコは、決して食べないでください。食用種と危険な種は驚くほどよく似ていることがあり、見誤ると深刻な被害につながります。サウスダコタ州立大学の園芸普及部門も、芝生のキノコを食べないことを明確な原則としており、私たちも同じ考えです。PlantMeは植物を識別するアプリで、菌類を識別するものではありません。私たちのアプリを含め、写真による識別でキノコが食べられるかどうかを判断しないでください。拾い食いをしやすい犬が芝生を使うなら、キノコを見つけ次第倒して集め、ごみとして処分します。室内の棚に置いている有毒な植物と同じように、口に入れさせないための予防が大切です。
必要な手入れと安全対策を済ませたら、あとは見守りましょう。フェンス際でキノコをつくる菌も、植物が共生相手として受け入れる菌根菌と同じく、地下で働く菌類の仲間です。室内で観葉植物の鉢にいつの間にかキノコが生えるのも、基本的な理由は同じです。水分と有機物があれば、世界のどこでも菌は活動します。雨のあとにキノコが数本出たからといって、芝生の管理に失敗したわけではありません。その下で、生きものが働いているということです。
参考文献・出典
よくある質問
芝生に生えるキノコは犬にとって有毒ですか。
有毒なものもあります。危険な種と無害な種を見分けるのは、キノコ採りに慣れた人でも難しいことです。犬が使う芝生では、生えてきたキノコを見つけ次第倒して集め、ごみとして処分するのが安全です。食べた疑いがあれば、速やかに獣医師へ連絡してください。
殺菌剤を使えば芝生のキノコはなくなりますか。
多くの場合、長期的な解決にはなりません。菌は土の中の有機物を養分にしており、見えているキノコは子実体にすぎないためです。余分な水分と養分になるものを減らし、発生条件を改善することが基本です。大学の園芸普及部門でも殺菌剤は最終手段という扱いです。なお、イギリスでは、フェアリーリング用に家庭園芸で使える殺菌剤はありません。
芝生にキノコが生えるのは病気のしるしですか。
ほとんどの場合、違います。芝の病気は生きた芝を侵す別の菌によって起こり、芝そのものに枯れ込みや斑点、糸状のものなどが現れます。一般に、雨のあとにキノコがまとまって出るのは、有機物が分解されているしるしであって、芝への感染ではありません。ただし、枯れた芝の帯を伴うフェアリーリングには注意し、穴あけ、水やり、施肥で症状を和らげます。
執筆者について

植物のレスキューとトラブル解決
カミーユさんは長年、植物店のカウンターに立ち、どのお客さまからも同じ質問を受けてきました。「これ、どうしちゃったの?」。ジャーナルのレスキュー記事を担当し、落ち着いて、まず診断から、そして責めないという姿勢で書いています。枯れかけに見える株の多くは、正しい判断ひとつで元気を取り戻せるからです。
