ジャーナル/Plant Science & Curiosities · 6分
光周性とは?植物が「夜の長さ」を数えるしくみ
植物はカレンダーではなく夜の長さを測っています。光周性とは何か、フィトクロムがどう暗闇を感じ取るのか、そして9月下旬がシャコバサボテンやポインセチアの短日処理を始める時期である理由を解説します。
秋分を過ぎて数日。窓辺の植物たちは、そのことをしっかり感じ取っています。感じているのは気温ではありません。暖かい9月にだまされる植物はいないのです。変わったのは夜の長さで、いまや夜は昼より長く、毎晩少しずつ長くなっていきます。植物がこの変化を読み取るしくみを「光周性」といいます。これを知ると、キクがなぜ秋に咲くのか、明るいキッチンに置いたポインセチアがなぜ赤くならないのかといった季節の小さな謎が、ひとつの生物学で説明できるようになります。
光周性とは、生物が昼と夜の長さの変化に反応する性質のことです。植物では、一年のなかでも特に大きな決断を左右しています。いつ花を咲かせるか、タマネギがいつ葉を増やすのをやめて球を太らせ始めるか、落葉樹がいつ冬に向けて葉緑素を分解し始めるか、といったことです。
数えているのは「夜」
用語は歴史的な偶然の産物です。何が測られているのか誰も知らないうちに、植物学者たちは植物を「短日植物」と「長日植物」に分類し、その名前が定着しました。のちの研究で、大切なのは昼の長さではなく、途切れない暗期の長さだとわかりました。短日植物は、実際には「長夜植物」なのです。暗期が限界の長さを超えると花をつけ始めます。多くの種では、その境目はちょうどいま越えたばかりの12時間前後です。
時間を計る色素、フィトクロム
その計測器は、葉に含まれるフィトクロムという色素です。フィトクロムは互いに変換できる2つの型をもっています。光が当たるとほぼ一瞬で一方の型に切り替わり、暗闇ではゆっくりともう一方の型へ戻っていきます。昼の光が何度もひっくり返して立て直す砂時計を思い浮かべてください。十分に長く、途切れない暗闇のあいだだけ砂が最後まで落ちきり、その「落ちきった状態」こそが、夜が長かったことを伝える化学的な合図になります。長い夜が何日も続くと、植物は開花へと舵を切ります。
この砂時計のたとえは、このしくみがよく知られるほど繊細である理由も説明してくれます。光はカウントダウンを一時停止させるのではなく、リセットしてしまうのです。生産者はこれを両方向に利用しています。温室のベンチに遮光幕をかけて長い夜を確保したり、逆に真夜中にわざと光を当てて株を栄養成長のままにとどめたりします。意図しない場合でも同じことが起こり、夜の温室を懐中電灯を持って横切るだけの漏れた光でも、生育が何週間も遅れることがあります。家の中では、廊下の明かり、リビングの照明、テレビ、薄いカーテン越しの街灯が同じ妨害役になります。
短日植物・長日植物・中性植物
光周性による3つのグループ
| グループ | 開花のきっかけ | 例 |
|---|---|---|
| 短日植物(実際は長夜植物) | 日の長さがおよそ12時間を下回り、暗期が限界を超えること | キク、ポインセチア、シャコバサボテン |
| 長日植物 | 日の長さがおよそ12時間を超えること | アスター、エキナセア、ハナビシソウ、レタス、ホウレンソウ |
| 中性植物 | 季節に関係なく自分のペースで咲く | トマト、スイートコーン、キュウリ、一部のイチゴ |
実際の境界は、表で見るよりもあいまいです。ペチュニアはどんな日長でも咲きますが、日が長いほうが早く、たくさん花をつけます。また、開花は光周性の反応のなかでいちばん有名なものにすぎません。タマネギの品種は球が太り始める時期によって長日型・短日型に分けられますし、秋に日が短くなることは、秋に葉の色が変わる理由のひとつにもなっています。日の長さは、植物が手にできるもっとも確かなカレンダーなのです。気温は年によってばらつきますが、太陽はうそをつきません。
9月下旬の今こそ大事な理由
シャコバサボテン(デンマークカクタス)を育てているなら、時計はもう動き始めています。花芽をつけるには、毎晩14時間以上の途切れない暗闇が必要で、9月中旬ごろから少なくとも6週間続けます。置き場所はできれば20℃前後の涼しいところが理想です。つぼみはたいてい4週間ほどで見えてきます。うれしいのはここからで、一度つぼみができてしまえば日長はもう関係なくなり、あとはつぼみが落ちないよう用土を均一に湿らせておくだけです。それでも咲かないときの対処法も含めた手順は、シャコバサボテンを咲かせるためのガイドにまとめています。
ポインセチアも同じしくみですが、失敗の余地はより小さくなります。光周性がとても強く、花芽をつくり、苞を赤く色づかせるには長く途切れない暗期が欠かせません。夜間にほんの数時間光が当たるだけで、こうした短日性の観葉植物は花芽がつかなくなります。キッチンのポインセチアがかたくなに緑のままなのはこのためです。昨年の株を育てているなら、短日処理のやり方と日々の管理をポインセチアの育て方で紹介しています。
生産者の技を家庭で
特別な道具は必要ありません。短日植物に秋を再現するには、大きな段ボール箱をかぶせるか、使っていない戸棚に入れて、1日12時間以上の暗期を数週間続けます。これが短日処理で、生産者はこの方法で好きな日にキクを咲かせて出荷しています。反対に、長日植物を季節外れに咲かせたいなら、ふつうの植物育成ライトで昼の長さを延ばします。どちらの場合も、植物をだましているというより、植物のカレンダーを書き換えているのです。
12月に花を楽しみたいなら、今週やることは次のとおりです。
- 暗くする場所を今のうちに決めましょう。夕方から朝まで本当に光が入らない戸棚や部屋の隅、段ボール箱などです。シャコバサボテンなら14時間が目安です。
- 夕暮れに入れて朝食時に出す、という決まった習慣にし、廊下の明かりが入らないよう気をつけます。6週間続けることがすべてです。
- 4週間ほどたったら、つぼみを確認します。つぼみが見えたら暗くする作業は終わり。あとはむらなく水やりすることだけが大切になります。
光周性は、一度気づくと感心せずにはいられません。目も脳もない植物が、私たちの多くよりも正確に季節を追っているのです。毎晩の長さを色素で測り、遺伝子に書き込まれたしきい値と比べ、暗闇が「今だ」と告げるのを待っています。
参考文献・出典
執筆者について

植物の科学と不思議
レナさんは植物学者で、植物の一番不思議な点は「なぜそうするのか」をほとんど問われないことだと考えています。光合成、植物どうしのコミュニケーション、病気の生物学など、ジャーナルの科学的な側面を担当し、研究の成果を鉢植えの前ですぐ役立つ形に翻訳しています。
